2021/10/16 07:28

おはようございます。


今朝の工房風景です。現在、A5サイズの引き出しのヒメコマツとナラの3段/4段を製作中です。
ヤマザクラの4段も追加で3台だけ追っかけ製作しています。
今日は引き出し部分の材料を規定寸法にカットし、そのあと鉋をかけて部材仕上げします。
明日以降は部材と部材の接合部分(仕口)加工をしてから、部材のエッジ部分を面取りし、
その後組み立てします。組み立て後、ようやく引き出し部分の箱ができますので、
間髪入れずツマミを作ってから、今度は引き出し本体と組み立てた引き出しの箱部分を調整して仕込みます。

当方の引き出しは組み立てたら完成ではありません。
引き出し製作は大事な『すり合わせ作業』が必要です。
引き出し本体に引き出し部分を入れて、出し入れがスムースになるように、
また、引き出し部分を本体に収めた時に、隙間が格段が均等になるように鉋で削って調整します。
この作業が一番神経を使いますが、この作業があるからこそスムースに出し入れできる引き出しになり、
見た目もピシッとしたものになります。
組み立て時やその前工程の接合部分を加工する段階において、
木はどうしても反りやねじれがわずかに出ますから、
切揃えて鉋をかけた後で微細な寸法変化や反りが出て、その後の接合部分可能や組み立てに影響し、
箱として完成したときに微細なねじれや寸法変化が起きます。
この微細な変化が、引き出し本体と引き出し部分を合わせた時に、相性を生みます。
出し入れしたときに一発でスムースに開閉できるものもあれば、
何らかの突っかかりや開閉の重さ、引き出しを出し入れしたときに左右どちらかに偏りがちになるなど、
そのエラーが何が起因してそのようになるのかを各段毎に把握して、
引き出し部分を削ったり、時には本体側の引き出しを支えるレール側を削ったりして、
出し入れがスムーズになるように細心の注意を払います。

塗装して完成させたあと、ご注文をお受けして出荷前のお品物には、
本体のレール部分に椿油を薄く塗布し、引き出し部分の滑りをさらに良くします。
スムースに開閉できるようにするため、あらゆる工夫と対策を行います。

樹は1本1本その特徴が違い、急峻な傾斜地で育ったものは傾斜に抗うため、
根に近い部分は真っ直ぐに自らを支えるために樹の内部で組織が硬さを変え、
部分的にバネのような組織になったりします。そういう部分は材料として木の板となったときに、
反りとして残りますし、その板から部品として切り出した後も、
その反りが残る傾向にあります。節の部分も木目が乱れるため、
節のある付近は仕上げがきれいにでいなかったり、反りやねじれの原因になったりします。
材料内部に残る微妙な水分量の差や、日をまたいで加工するので、
天候による湿度気温の変化によっても材料が寸法変化や形状変化を起こすため、
組み立て後にそれらが影響を及ぼして微細な反りやねじれを生みますので、
最終的に引き出しとなったときにそれらを上手く相殺して引き出しとして機能するようにします。
これが素材を自由に熱や圧力で成形できるような工業製品と大きく違う部分であり、
木の引き出しの精度とスムースな可動を実現するにあたって、調整が必要になる部分であり、
それ故緻密な仕事の成された引き出しは多量には作れず、どうしても高価にもなりますが、
お手元に届いたその引き出しは、かたち大きさこそ揃ってはいますが、
唯一無二のお客様のお品物になります。

朝から長く書いてしまいました。。。
それではまた。