2021/08/23 21:41

こんばんは

こんばんは、堂谷木工製作所です。
見苦しい絵面ですみません!

現在ご予約承り中の『糸巻きスツール』を製作中です。
今は製作の最終段階、組み立てた後の最終研磨作業です。
少し目の粗いサンドペーパーで荒磨き→目の細かいサンドペーパーで最終磨き上げを行っています。
この作業が終わったら、やっと塗装ができます。
この全体磨き仕上げ作業だけでも、1台につき1時間の磨き作業が必要で、
塗装後の滑らかな手触りや、部品同士のスムーズな曲線、面のつながりを出すために欠かせない作業です。
家具製作や木工を仕事にしている人には、この磨き仕事が嫌いだ~という職人も多いと思いますが、
当方は結構磨き作業が好きです♡
手をしきりに動かし、指は痛くなるのですが無心になれる作業で、
今後のことを考えたり現状の問題に悩んだり(?)しながら集中します。

8月25日には第一弾6台が完成します。
うち3台は他の販売先ですでに売約済みですが、まだご予約数に空きがありますし、
このあと第二弾、第三弾でまた追加でどんどん完成させます。


上記画像はこれから組み立てる部材たち。
この部材の段階で磨き仕上げを2回行い、組み立て後にまた全体仕上げを2回行うので、
合計4回サンドペーパーで磨き上げることになります。
さらに座面に関しては、もう一度最後に磨きをするので合計5回!も磨き作業をすることになります。
ただ座るスツールだけでなく、高さも43センチあって使いやすく、ソファ横のサイドテーブルとしてもお使いいただけます。


日本の地で優に50年以上かけて育ってきたヤマザクラを、
50年使える家具にするためには、『作るのに手間をかけている』と言うのも実はおこがましいぐらいです。
一番手間がかかっているのは紛れもなく、種から目を出し、険しい山の中で過酷な環境と生存競争に勝ち抜いてきた『樹』そのものです。
樹が生きてきた証が木目となって現れます。僕たち作る人間は、その木目をどう生かしてあげるかいつも考えます。
人と同じように、一本の樹であっても部分的に「こりゃダメだ使えない」という部分もあったり、
「この部分はすごく美しい!」という箇所もあります。
節やシミも当然存在します。製品として植林される杉やヒノキと違い、
生きる上で過酷な環境で如何にして効率よく日の光を浴び、急峻な山地でしっかり上へ上へ延びるには、
自重のバランスを考慮するためにどこにどのように枝を張るかを、樹自身が長年適応しながら伸びていきます。
そうすると樹を板として製材する際に、その自在に伸びた枝が、ときに難点であったり欠点であることにもなります。
人も60%ほどが水分で構成されるように、樹も生えているときは樹中に自重の2倍以上の水分をため込んでいます。
樹がまさに天然の水タンクです。その樹が板になり、このような木製品になるには、
樹の中にある多量の水分をスッカラカンにする必要があり、
それは伐採後、製材所で丸太を板上にスライスし、何か月も日干ししてある程度水分を飛ばし、
(切り干し大根を想像するとわかりやすいです)
家具用材とするにはさらに形状を安定させるために、巨大な乾燥窯で言わば蒸し焼きに近い感じでさらに水分を飛ばします。
するとカラッカラになり、身が詰まってカチカチになります。

…話が脱線していますねすみません。
要はスツール1脚ができるには、何十年という時間の経過が実は存在しているということを言いたかったのですが、
天然資源である素材を使ってものを作るということは、
工業製品とカテゴライズされる中においては少しニュアンスが違い、
素材の個性を如何に製品に生かすか、そこが作り手に感性を求められる仕事だと言えます。
もちろん、強度や耐久性において必要以上に検討し製作することは当然の事です。

作り手がその製作物に対して価値を与えるという考え方は、当方はあまり好きではないと言いますか、
樹そのものの価値を利用し、そこに知恵を加えて商品に生かしている仕事だと、当方はとらえています。
作り手の手を離れ、最初にご購入いただいたお客様の手を離れ、形ある限り第二第三の人生を歩むかもしれない製品は、
樹が木となり、最終的に木製品となって完成後何十年と使われ続けるだけの耐久性と、
多くの人たちに長きに渡って使用し愛されるだけのカタチとしての魅力が必要です。
流行り廃りでの一時の流行によって瞬時に消費されごみとして淘汰されることを、なるべく避けたいと考えています。
それは作り手のエゴではなく、何十年生きてきた樹に対する敬意から、
多くの人に使ってもらい、触ってもらい、その樹の生きた証を感じてもらえる有用な木製品を作る責任があります。
どのような生活局面でどのような使われ方をするのかは、作り手の手を離れると正直わかりません。
ただ、作り手として当方が製作した製作品に関しては、
当方が『堂谷木工製作所』という仕事を行っている間は、メンテナンスや修理を当然承っています。
鉄や石油由来で作られた製品は、再資源という第二の人生があります。
もちろん、無垢材で作られた木製品も、最終的には粉砕して燃料としては使えますが、
同じ木という資源に戻すことはほぼ不可能で、一度カタチにしてしまうとそこからそのまま再資源化はほぼ不可能です。
それ故カタチにする責任があると当方は思っています。
天然資源を如何に魅力的な製品にするか、それは単なる自分自身の経済活動だけで語るものではなく、
長い目で見て、貴重な資源を有用に利用するということを常に意識する、
ただ、木はまた種から植えて育てることもできる資源でもあります。
天然資源としての木のことを考えつつ、いつかは自分の経済活動を、山に、樹に還元できるまでにしたいなぁと思いながら、
今日も手を動かしています。

乱文長文お読みいただいた方、誠にありがとうございました。

堂谷木工製作所